日本共産党福井県委員会と民主団体が政府に申し入れ
再漂着・融資問題・海岸復旧・風評被害、政府の責任で
要望書の全文
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要望書
内閣総理大臣橋本龍太郎殿
関係省庁各位殿
1997年2月24日
日本共産党福井県委員会県 委員長 元山章一郎
福井県民主医療機関連合会 会長 平野治和
福井県労働組合総連合 議長 町原秀夫
今回のロシア船籍タンカー沈没による重油漂着の被害は福井県の沿岸12市町村すべてに及び、関係自治体、.住民に多くの被害をもたらしています。
全国各地からのボランティアと地元住民、自治体関係者の連日の「人海戦術」作業によって相当量の重油が回収されたとはいえ、いまなおあちこちの消波ブロックや岩肌は重油汚染で真っ黒です。油膜が海面のいたるところに漂っています。断崖絶壁の海岸など多くの所がまだまだ手付かずに残っています。
幾度となく除去作業をしても、海が荒れるたびにあらたな油塊が漂着しているところもあります。海上に浮遊している油塊は見当たらないというのに、突如どこからか漂着してくるのです。
砂地を掘っても掘っても粒状の油がでてきます。海底に沈殿したり海草に付着している油塊除去など想像に絶する作業が今後も求められています。
オイルフェンス、ドラム缶などの調達経費や県職員の手当など県が要した回収経費は1月だけで最低6億円ともいわれています。市町村や漁協などの回収経費をふくめるとさらに多大なものになります。
重油回収技術や生態環境回復などの技術的な問題も山積みされています。
いまなお船首が、三国町沿岸で最も良い漁場の中心にいすわっています。重油抜き取りのために設置された作業用道路の撤去問題も残されています。
漁を中止し、海上や沿岸での回収作業に従事した漁業者の被害はいうに及ばず、養殖漁業被害、今後予想される環境生態への影響なども甚大なものです。直接の影響はない越前ガニなども一時期半分以下の値になるなど魚価の低下や魚介類の売れ行き不振など、いわゆる風評被害も続出しています。
民宿・ホテルなどのキャンセルも相次いでいます。1月だけでも三国町で4550人、芦原町で4600人以上といいます。キャンセルばかりか、例年ならすでにうまっている夏場の予約も全くない状況です。
私たちの取り組んだアンケートでも「例年の50パーセント減収」「売上減700万円」「キャンセルで150万円、夏までの予約も全くない。夏場の客をあてこんで借金をしたが、これではもうかえせない。」「40パーセント減収」など、悲痛な声が数多く寄せられています。いまこそ政府が、こうした県民の声に真摯に応えていくべきときです。
漁協関係者は「国にいろいろ聞いても、役所のたらい回しでなかなか対応してくれん。」と語っています。
自治体の環境回復や回収技術チームの関係者は「政府はなにもアドバイスをしてくれん。これからどう進めたらいいのかさっぱりわからん」と頭をかかえています。
政府は「災害対策基本法上は災害に該当するのは当然」としながら、「自然災害ではなく激甚災害の指定は困難」などとしています。国庫補助制度の弾力的な運用や特別措置法などの確実な財政支援を具体化すべきです。
海上保安庁は「海上での浮流油がほとんどみられず船体後部からの急激な重油流出も考えにくい」として、油防除態勢縮小と重油回収船半減を決めています。沈没タンカー後部からの油が漏れ続けているのがはっきりしているのにです。巡視船のジグザグ走行だけで、漏れ出ている油をなくすことができるのでしょうか。
こうした姿勢は、とても被害県民の願いを真正面に考えているものとは思えません。
今回の事態は「重油流出事故関係府県連絡会議」の陳情、県下の被害12市町村議会の政府関係機関への意見書や要望書などにもあるように「被害の規模からも国家的見地で取り組むべき災害」です。
福井県は世界一の原発集中地帯です。それだけに「阪神大震災でも政府の対応は後手後手になった。今回も自治体や住民まかせ。これでもし原発事故にでもなったらどうなるのか」との不安も出されています。
ぜひ、政府関係機関のみなさんが「国民の公僕」としてその役割を発揮され、以下の点での対応・対策をはかられるよう要望いたします。
(要望の中心点)
●今回の事故による重油漂着被害を「災害」として扱い、災害対策基本法、激甚災害法などの適用特例措置をとり、財政支援がおこなわれるようにすること。特別措置法制定も考え、国の責任で汚染除去・被害補償・環境生態回復などの対策をすすめること。
●重油回収技術や生態環境回復策の世界各地の実例や、専門家の意見収集などを早急に行い、自治体などに知らせること。政府としても研究・実験をすすめること。
●漁業被害、民宿・観光業や魚介類販売店の被害などの被害額算出のガイドラインを示し、政府の窓口の一元化をはかること。これが、国際油濁補償基金のいう「被害額の6割借支払い」の条件である「示談」への道筋になる。「示談」がなくても一部仮払いする可能性もあると報道されているが、この方向を全面的に進めるように申し入れること。また、補償基金は漁業者、中小の油回収業者を優先するとしているが、民宿・観光業者なども対象にするよう働きかけること。
●海水浴場に少しでも油が残ったままだと、海水浴客の激減のみならず、観光、民宿など地域全体にはかりしれない大きな影響をおよぼしかねない。完全復旧のため、砂や海砂利の全面入れ替えなど抜本的な対策をとること。
●漂着自治体の地元住民の除去作業については災害復旧作業としてしかるべき人件費を国の災害復旧費で支払うことができるような特別措置をとること。
(流出重油処理対策)
1、あらゆる排出油防除資材を政府対策本部のもとで総動員し、回収困難な断崖絶壁の漂着油回収に国の責任でのりだすこと。重油除去作業の各地の実態をよくつかみ、国としての適切な指導援助体制を構築すること。
2、、タンカー本体の調査活動をすみやかにおこない、可能な万全の体制をとること。漏出重油の監視・速報体制、海上回収に全力をあげること。巡視船での湧出油の拡散処理でなく、完全回収の態勢をとること。
3、沿岸での回収資材の確保に責任をもつこと。県や市町村、県など回収経費について海上災害防センターからの支払いを国として求めると同時に、この間かかった経費についての仮払いを国の責任で行うこと。
4、ボランティア活動保険掛金などボランティア受入れにともなう必要経費を国の責任で対応すること。
住民の安全対策、健康管理を万全たらしめること。またボランティア保険の適用範囲の拡大も検討すること。
(被害補償対策)
1、漁獲損害・休業補償・漁場原状回復など関係漁協などの損害補償・賠償請求について「国の窓ロを一本化し責任をもって万全の措置をとること。
2、船首座礁現場の仮設作業道を長く放置すると、今後の漁場環境に大きな影響を及ぼしかねない。早期完全撤去に責任をもってあたること。
3、民宿など観光業の損害はもちろん、そこで働く労働者の損害などについても、その補償、当面の生活保障のための万全の措置をとること。
4、福井県や商工会などではじめ緊急融資にたいする利子補給を国としてもおこなうこと。また、その融資枠と適用範囲の拡大などを指導し、利用しやすいものにすること。
5、漁業者、観光業者などに一時金支給など救済措置をとること。事業資金の借金返済猶予措置がとれるよう、関係金融機関への指導をすること。
6、観光および漁業など、今回の災害にかかわるすべての風評被害の実態を国としても調査し、これらの被害補償を国としておこなうこと。
(生態環境・景観回復対策)
1、海上・海岸に対する環境汚染、海洋生物についての総合的調査を進め環境復旧対策をすすめること。
2、水産庁の調査船「みずほ丸」の調査期間をより長期間のものにし、調査結果を定期的に関係自治体にも公表すること。
3、被災現場の状況に応じた復旧対策のガイドラインを国の責任で早急につくり、自治体などに指導できる体制をつくること。
4、閉鎖海域である日本海の環境をまもることは、沿岸諸国の共同の責任である。関係国にも要請し、日本海全域での生態環境調査などを定期的におこなうようにすること。
「日本海の安全と健全な漁場確保のための条約」などの法的対応について研究し、関係諸国に働きかけること。
5、バイオ処理の化学的有効性や二次災害の危険性などの調査・研究、実例収集をおこない、関係者へのアドバイスなどを急ぐこと。またバイオ処理の安全基準など法的規制を急ぐこと。
(再発防止対策)
1、今回の事故に対する基本的な責任を負っているロシアに対し、事故原因、被害補償、再発防止などの諸問題についての責任ある対応をきちんと求めること。ロシア側が発表した事故原因の中間発表を速やかに公表し、問題点をあきらかにすること。
2、現在の排出油防除体制を抜本的に見直し、日本海側への荒天に耐えうる油回収船の配置など緊急時対策をつよめること。
3、老朽タンカーが日本海を日常的に航行している現状を正確に掌握すること。日本のタンカーの安全基準に達していないものは、日本近海での航行を規制するような措置をとること。
4、今回のような不測の事態にそなえ「緊急時マニュアル」をつくること。特に、原発の「緊急時対策」の確立をいそぐこと。
以上