フランスにみる重油事故。

回収が流出確認から6日後?そんなことはフランスではあり得ない!
汚染対策沿岸漂着阻止に最大の力点。24時間態勢で何重もの対策
(1月24日)                  戻る

 「回収作業開始が流出確認から6日後?そんなことはフランスではあり得ない」(ジャーナリスト)、「日本は島国だから最先端の装備と対策を持っていると思っていたが、まったく驚きだ」(汚染対策作業に従事する港湾労働者)----重油汚染をめぐる日本政府の対応は、フランスの関係者の間でも驚きをもって受け止められています。大きな汚染事故を契機に体制を整備してきたフランス。その汚染対策をみてみました。


◆関係各省が一致協力する体系的システム

 フランスの海難汚染事故対策が開始されたのは、1967年の「トレイカニョン」号の汚染事故がきっかけ。72年には本格始動しました。しかし78年3月に起きた「アモコ・カディス」号の大汚染事故では、22万トンもの原油が流出して西部沿岸に到達、テレビでは連日のように黒い海と浜辺の映像が流れ、国民に大きな衝撃を与えました。
 この事故で体制の不備が明らかになったフランスは、以後これを徹底的に整備。「海洋における国家行動という概念のもとに、関係各省が一致協力する体系的システムをつくり上げました。


◆常設の「海洋事務局」。24時間態勢で何重もの対策
大型えい航船は、悪天候になると事故がなくても出動、待機。


 その組織構造をみると、中央レベルに首相を責任者とする「海洋各省委員会」と常設の「海洋事務局」が存在。国防省(海軍)、運輸省、税関、環境省などが連携できる仕組みが保証されています。一方地方レベルは三つの海域に分割され、シェルブール、ブレスト、トウーロンの三カ所に「海軍軍管区長官」が常駐、中央組織と連結しています。
 さらにその内容では、(1)事故の予防(2)事故が起きた場合の集団対応、と大別して二つの重要概念が存在しています。
 このうち予防ではまず、ドーバー海峡からイギリス海峡を経て大西洋に至る海域を通過する大型船舶について、万一の場合に汚染がすぐに沿岸に到達しないよう、かなりの沖合に北上用と南下用の「義務ルート」を設定。
 また海軍は、沖合での大型タンカー事故などに対応できる大型えい航船を計5隻借り上げており、3地点に常駐させて24時間出動態勢を整備。とくにこれらの大型えい航船は、悪天候になると事故がなくても出動するのが大きな特徴で、義務ルートに近い沖合に停泊して待機します。
このため事故発生の場合にも迅速に現場に急行、汚染が重大化する前に事故船に対処し、えい航できる仕組みです。この大型えい航船の借り上げだけでも、フランスは年間10数億円を投じています。
 このほかにも、関係各省が、それぞれ監視船やレーダーシステムを備えています。

◆大型支援船も急派。大小の吸引機も

●「ポルマール計画」=事故や汚染の規模が局地的対応では不十分だと判断ざれた場合に海軍軍管区長官が発動を決断。

 「重要なのは、まず事故の予防に万全を期すこと。そして事故が起きた場合には、何よりも、汚染が沿岸に到達するのを防ぐことです」
 こう強調するのは、フランス海軍参謀本部・「海洋における国家行動」局のフレデリック・ジヤコべ海軍少佐。「この見地からフランスは、海軍を中心にして『海洋ポルマール計画』という緊急時計画を発動し、ただちに名省と連携します」
 この「海洋ポルマール計画」は、事故や汚染の規模が局地的対応では不十分だと判断ざれた場合に海軍軍管区長官が発動を決断。これが発動されると、ただちに各省連携を含めて必要部門が動員され、財政面では環境省が管理する海難汚染事故緊急出動基金が適用されます。
 また海軍は、汚染水域を囲いこんでそれ以上拡大しないよう遮断してしまう大型支援船「アルシオン」号や「工レット」号を急派。汚染物質を吸い取ってしまう巨大な吸引機「トランスレック」を積載した船も現場に急行します。これでも汚染が除去できない場合には、汚染物質を分散させる処理剤を散布できる船やヘリが急派されます。この一連の作業については、除去、ストック、廃棄処理まで定められています。
 一方恒常的な研究機関として、「汚染対策実践研究委員会(OEPPOL)」(海軍が装備面を研究、「水難汚染事故資料・研究・実験センター(OEDRE)」(各省が財政援助)が高度理論を研究。とくにOEDREは、汚染海域の条件や養殖場の有無などを判断して、効果的な汚染除去方法をただちに科学的にアドバイスするのが特徴です。
 年間5万2千隻もの大型船舶が「義務ルート」を通過するイギリス、ドーバー海峡。そのうち1割が、重油などを積載したタンカーです。しかも濃霧や強風などの悪天候が多く事故が多発、加えて偏西風のため、汚染物質がフランス側に漂着しやすくなっています。

◆汚染到達前に遮断

 ●「地上ポルマール計画」=万が一汚染が沿岸に近づいた場合は、優先防衛地域が判断され、小型の支援船が緊急出動(内務省)

 しかし、万が一汚染が沿岸に近づいた場合は、今度は「地上ポルマール計画」が知事によって発動されます。こちらの中心になるのは内務省。これが発動されると、港湾やカキ、サーモンの養殖場など優先防衛地域が判断され、小型の支援船が緊急出動、これら地域に汚染が到達しないよう囲いこんで遮断します。また小型吸引機を使って特別チームが除去作業。こちらも廃棄処理まで作戦が定まつています。
 こうしてフランスでは、汚染を沿岸に到達させないために何重もの対策を講じており、しかも24時間態勢で、即時適応するのが常識。国民の生活と財産を全力で守るのが、国家の当然の任務だからです。
 日本で重油流出が確認された日(3日)から半月が経過した18日夕、ドーバー海峡でバハマ船籍のノルウェーの石油タンカーとメキシコの化学物質輸送船が衝突しました。フランスではこの日、ただちに専門家ら4人を乗せたヘリが現場に飛びました。

 「専門家らがその日のうちに現場で判断し、流出したのが幸い重油でなく揮発性だったことを確認、それでも翌日またヘリを飛ばしました」。仏海軍参謀本部で、担当官はこう語りました。