現在の原発耐震設計および「新耐震指針」(案)では重大事故を引き起こす・・・関西電力などは、耐震設計を見直すべき! |
||||||||||||||||
| 2006年8月6日 原発の安全性を求める嶺南連絡会 事務局次長 山本雅彦 |
||||||||||||||||
1、兵庫県南部地震の後、5年も議論してつくられた「新耐震指針」案を金沢地裁が明確に否定
|
||||||||||||||||
| 3月24日、金沢地裁が、現在の耐震設計には重大な欠陥があるとして志賀原発2号機の運転差し止めを命じる判決を出しました。さらに、原子力安全委員会のもとで原発の耐震指針を検討している分科会は、4月28日、「耐震設計審査指針」の改定案(「新耐震指針」案)をまとめました。 1981年に策定された現行「耐震指針」は、2001年に設置された同分科会で5年にわたり検討され、審議、意見公募を経て、今年の夏過ぎには原子力安全委員会で「新耐震指針」が決定される予定です。 「新耐震指針」案の特徴として、一つ目に、基準地震動策定の手法を高度化しています。これは、従来の経験的な方法に加え「断層モデル」を併用しています。二つ目に、原子炉施設の重要度分類のAクラスやAsクラスをなくすことで一部の施設の耐震性を格上げしています。三つ目に、「想定外の地震」にどう備えるかで、改定案は想定外の地震で住民が被ばくするリスクを認め、それを小さくする努力を求めました。しかし、リスクを数値で示す確率論的安全評価の方法は盛り込みませんでした。 金沢地裁判決が「耐震指針」の理論的支柱である「松田式」「金井式」「大崎スペクトル」などをはじめ「新耐震指針」案の主要な柱の崩壊を指摘しましたが、これらを解決し得たのか疑問です。 また、安全審査の対象となる活断層が5万年から13万年に伸びたことは一定評価できます。 |
||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
| しかし、同分科会の専門委員である石橋克彦・神戸大学教授は、長期的に見ると、日本列島全体が大地震活動期に入りつつあり、今後発生する大地震が、これまでに経験したことのない震災を引き起こす可能性があると指摘し、大地震の震源の直上に原発を造るべきでないこと、原子炉施設が大余震や地盤の隆起・沈降に耐えること、などは盛り込まれていません。さらに活断層がない場合の規定が曖昧など、問題は多く残されています。 今回の「新耐震指針」案では、想定すべき直下地震の規模について、これまでM6.5としていたのを「M7クラスが起こりうる」ことを基本にすべきだと提言しました。それによると、具体的な地震規模を明記していませんが、M7クラス(M6.8〜7.3)を基本とし、「詳細な調査等によりそこまで想定する必要がないと実証されれば、この地震規模の設定を下げてもよい」としています。これでは指針が見直されても、周辺の活断層を過小評価すれば、安全だとされる可能性があります。 金沢地裁は、北陸電力志賀原発2号機の運転差し止め訴訟で、「活断層が確認されていないから起こり得ないとほぼ確実に言える地震の規模は、M7・2ないし7・3以上というべきだ」と指摘し、活断層が見つかっていなくても、M7クラスの地震は起きるとの判断を示したことは、「新耐震指針」案を明確に否定したものです。 |
||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||
2、関西電力や日本原電などが国に提出した原子炉設置許可申請書の断層評価の内容と、地震調査研究推進本部(文科省)の断層評価の内容に大きな相違点
|
||||||||||||||||
| 1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)は、活断層によるマグニチュード7.2という大都市直下型の大地震で、戦後最大規模の人的、物的被害をもたらす災害となりました。壊れるはずがないと言われた高速道路高架や新幹線高架などが、大地震に耐えられないことが明らかになりました。 その後の2000年の鳥取県西部地震、2001年芸予地震、2004年の新潟県中越地震、2005年の宮城県南部地震(女川原発1号機で記録した揺れの加速度が、理論上の最大地震を想定した「設計用限界地震(S2)」を上回った。0.05秒の短い周期の揺れで、S2の673ガルを超える888ガルに達した)同年福岡沖玄海地震など、日本列島各地での大地震が発生しました。 これらの多くの地震は活断層の存在が必ずしも確認されていたところに発生したわけではありません。 そして、多くの地震学者や研究者が、日本列島全体が地震の活動期に入りつつあり、今後もマグニチュード7クラスの地震が多く発生する可能性があると述べ、特に、敦賀半島を中心に若狭湾一帯で、マグニチュード7クラスの直下型地震が起こる可能性があり、兵庫県南部地震などの教訓を組み入れた、原発など建物の耐震基準を見直す必要があると指摘しています。 |
![]() |
|||||||||||||||
|
||||||||||||||||
| こうした指摘を受けて、既設の原発を所轄している経済産業省(原子力安全委員会の分科会)は2001年から原発の「耐震指針」の見直しに着手。しかし、評価できる項目もある反面、原発企業の言い分をそのまま受け入れた「新耐震指針」をこの夏にも決定しようとしています。 また、1995年7月、全国に総合的な地震防災対策を策定し実行するため、議員立法によって「地震防災対策特別措置法」が制定。「地震に関する調査研究の成果が国民や防災を担当する機関に十分に伝達され活用される体制になっていなかったという課題意識の下に、行政施策に直結すべき地震に関する調査研究の責任体制を明らかにし、これを政府として一元的に推進する」とし、同法に基づき総理府(現在は文部科学省)に、「地震防災対策の強化、特に地震による被害の軽減に資する地震調査研究の推進」する目的で「地震調査研究推進本部」(以下=「推進本部」)がつくられました。 推進本部は、2003年3月に「三方・花折断層帯の長期評価について」、同年6月に「野坂・集福時断層帯の長期評価について」と2004年1月に「柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の長期評価について」をあいつで発表。そこに記載されている断層評価の内容と、関西電力や日本原電などが国に提出した原子炉設置許可申請書の断層評価の内容に大きな相違点があることがわかりました。 推進本部の発表によると、地震断層帯の「長期評価」で、兵庫県南部地震と同規模の大地震を引き起こす可能性がある長さの断層帯の存在を指摘しています。(松田の定義にしたがって紀震断層の区間を、近接し、並走する複数の活断層が1つの区間として活動すると推定する手法により) 一方、関西電力などは、従来の手法(近接し、並走する複数の活断層を連動して動くと見ず、分断して短くし、別の活断層として評価する)を踏襲し、地震の規模を低く見積もっています。 もし原発が集中立地する若狭湾一帯で、大地震が起きた場合、地震による震災と、原発の放射能による災害が若狭の住民を襲う(「原発震災」)ことになります。阪神・淡路大震災では、全国からたくさんのボランティア団体が支援に駆けつけてきましたが、もし若狭で「原発震災」が起きた場合、放射能の汚染が心配で、だれも支援に来てもらえないという事態も予測されます。 推進本部の評価を年代順に見てみます。 (1)「三方・花折断層帯の長期評価について」(推進本部) 推進本部の三方断層帯の評価では、「三方断層帯は、福井県三方(みかた)郡美浜(みはま)町沖合いの若狭湾から遠敷(おにゅう)郡上中(かみなか)町に至る断層帯である。全体として長さは約26kmで、ほぼ南北方向に延びており、断層の東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層である」(図1)として、「北からA断層系、日向断層、三方断層等が雁行配列(図1)するが、松田(1990)の定義によれば、これらは1つの起震断層を形成していると考えられ」、「断層帯全体が一つの区間として活動し、マグニチュード7.2程度の地震が発生すると推定される。また、その際に幅の広い範囲にわたって断層の東側が相対的に隆起する段差や撓みが生じ、その隆起・沈降量の合計は、3〜5m程度に達する可能性がある」と記述。また、三方断層帯と花折断層帯北部が同時に活動するとすれば、その場合の地震規模は、断層の長さ54kmで、マグニチュード7.7になる可能性もあると指摘しています。 (2)「野坂・集福時断層帯の長期評価について」(推進) 推進本部の野坂断層帯の評価では、「野坂断層帯は、若狭湾から福井県三方(みかた)郡美浜(みはま)町を経て敦賀市に至る断層帯である。長さは約31kmで、北西−南東方向に延びており、左横ずれかつ北東側が相対的に隆起する逆断層である」(図2)と説明。さらに「若狭湾のB断層系、若狭湾から敦賀平野の南部に至る野坂断層、野坂断層の南東部分とほぼ並走してその南西側に分布する野坂南方断層より構成される。本断層帯は大部分が海域に位置する。断層帯の北西端付近では、B断層系を構成する断層が右雁行配列している。また、B断層系と野坂断層の海底延長部との間は、約4kmにわたって断層の存在が確認されていない」としていますが、松田(1990)の定義によると、全体が1つの起震断層を構成しているとみることができることから、この断層帯の将来の活動について、「野坂断層帯では、全体が1つの区間として活動し、マグニチュード7.3程度の地震が発生すると推定される。この場合、2−3m程度の左横ずれと断層の北東側が南西側に対して高まる段差が生じる可能性がある」を記述しています。 (3)「柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の長期評価について」 |
||||||||||||||||
|
さらに、「断層帯主部(柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯)とその西側を並走する浦底−柳ヶ瀬山断層帯は非常に近接して分布していることから、断層帯主部の一部と浦底−柳ヶ瀬山断層帯との活動に関連がある可能性」あると指摘しています。松田(1990)の定義によれば同様に、全体が1つの起震断層を構成しているとみることができることから、この断層帯の将来の活動について、「断層帯主部は、最新活動と同様に3つの区間に分かれて活動すると推定されるが、北部と中部または中部と南部を合わせた区間(以下、北中部及び中南部とする)が活動する可能性や断層帯全体が1つの区間として同時に活動する可能性もある。北部、中部、南部の3つに分かれて活動する場合、北部ではマグニチュード7.6程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層の東側が相対的に4−6m程度隆起すると推定される。中部ではマグニチュード6.6程度の地震が発生すると推定され、その際には1m程度の左横ずれが生じる可能性がある。南部では、マグニチュード7.6程度の地震が発生し、その際には3−4m程度の左横ずれが生じる可能性がある。北中部または中南部が活動する場合は、それぞれマグニチュード7.8程度の地震が発生する可能性がある」と記載。「浦底−柳ヶ瀬山 断層帯では、マグニチュード7.2程度の地震が発生すると推定され、その際には2m程度の左横ずれが生じる可能性がある」と記述されています。 |
||||||||||||||||
![]() |
||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
|
そして、仮に両断層帯が連動して動いた場合、「断層帯全体が活動する場合は、マグニチュード8.2程度の地震が発生する可能性がある」と指摘しています。 |
||||||||||||||||