(97年5月14日付け赤旗)
◆市川富士夫・明大講師元日本原子力研究所研究員の
話し。・・もともと危険なことやっている
動力炉・核燃料開発車業団(動燃)東海再処理工場の火災・爆発事故(3月11日)から2カ月がたち、5月7日には科学技術庁が原因調査にかんする中間報告を発表しました。現段階で事故原因はどこまで明らかになったのか、放射性物質の放出にたいする対応はどうだったのか、二人の専門家に聞きました。
いまの段階で、事故原因の可能性として考えられるのは、つぎのような反応です。
一つは、科技庁の中間報告でもふれているアスファルトと硝酸ナトリウムの反応です。73年に動燃がおこなった実験で、温度が上がった場合、アスファルト火災の原因になることが明らかになっています。アスファルト混合物をドラム缶につめているとき、いつもは見られない蒸気のようなものが出ていたと報告されていますから、通常より温度が上がっていたと考えられます。
二つ目は、有機溶媒と硝酸などとの反応です。中間報告ではトリブチルリン酸やドデカンなどの有機溶媒が廃液にまじっていたといっています。有機溶媒と硝酸などがまじっていて温度が高くなると、レッドオイルという爆発性の物質ができるので非常に危険です。レッドオイルでなくても類似の物質ができれば危険性は同じです。
このため、再処理の主工程では温度が130度以上にならないようにしているのに、廃液の処理は200度ぐらいでやっています。もともと危険なことをやっていたわけで、これまで火災爆発事故が起きなかった方が不思議といってもいいかもしれません。
さらに、アスファルトの放射線分解がこれらの補助的な役割を果たした可能性についても考えておく必要があります。動燃の報告書には、アスファルトに放射線を照射すると気体が発生し、その約70%が水素だと書かれています。水素は爆発性の気体で、アスファルトの熱分解でも発生します。事故調査委員会では、爆発の原因に水素がかかわっていたという指摘もされています。この可能性について、科技庁の中間報告はふれていませんが、なぜふれていないのか理解できません。
事故調査委員会では、化学工場の安全技術としては時代遅れと指摘されたようですが、私は工場ができたときに見にいってそう感じていました。当時、設備の自動化がかなり普及していたのに、人手に頼る施設になっているのに驚きました。
中間報告では、科学技術庁の対応についても書かれていますが、動燃の対応が悪かったから判断を誤ることになったと、責任のなすりつけといいわけに終始しています。安全審査で、「火災事故が起こることは考えられないが、万一に備えて、火災報知器、消火設備等を設けて、重大な事故に至らないようにする」といっていたのだから、なぜこういう重大な事故が起こってしまったのか、国民の納得できるように示さなければ、科技庁の責任を明らかにしたことにはなりません。
◆角田道生・埼玉大講師元日本原子力研究所研究員の
話し。・・研究・技術の退廃感じる
今回の事故で、動燃が「低レベル」といっている廃液を処理する施設でさえ、大量の放射性物質をかかえこんでいることが明らかになりました。
青森県の六ケ所村で建設が進められている再処理工場が動きだせば、東海再処理工場の10倍以上の放射性物質が施設内に存在することになります。私は、建設の前におこなわれた公開ヒアリングで意見をのべたのですが、このとき科技庁は考えられる最悪の事故が起こっても放出される放射性物質の量はたいしたことはないといいました。科技庁などが「安全」といっていることが、いかにでたらめかはっきりしたと思います。
今回の事故で放出された放射性物質の環境濃度の測定結果をみると、「検出限界以下」となっているのが目立ちます。これをみれば、たいしたことはないんだなと思ってしまうのが普通ですが、実はそうではありません。
測定方法を変えれば、もっと低いレベルでも測ることができ、「検出限界以下」ということにはならないんです。現に、動燃が検出限界以下ばかりだったと発表したとき、60キロメートルも離れたつくばの気象研究所が検出しています。動燃が設定している検出限界というのは、基準よりわずか下の値です。これでは働いている人や周辺住民の安全は守れません。
東海再処理工場は、日本最初の再処理工場です。事故が起こったら、どのような放射性物質がどのように周辺に散らばるのか、精密な測定をしておくことが大事だと思います。研究者・技術者なら、そういうことはいわれなくてもやろうとすると思うのですが、この間の発表の様子を見ているとそうしたことは感じられない。動燃における研究や技術の退廃を感じます。
◆放射性物質の放出量、セシウム137だけでその
10倍と推定
科技庁の中間報告によると、施設内にはベータ線を出すものだけで8千4百億ベクレルの放射性物質がありました。動燃の調査(排気筒から放出された量の推定)では、このうちの約0.02%にあたる1億8千万ベクレルの放射性物質が環境中にもれたことになっています。実際には爆発で壊れた窓から放出された分がずっと多く、日本原子力研究所のコンピューターシミユレーションではベータ線を出す放射性物質の一つのセシウム137だけでその10倍と推定しています。
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