「安全神話」の延長線上の発想では国民の不安はとり除けない一一予算要求に見る原子力広報戦略(市川富士夫・中央大学講師)
(97/11/11)
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- 98年度予算案のうち原子力予算の概算要求をみると、通産省関係が約1299億円(うち一般会計分3億円)、科学技術庁関係が約3406億円(うち一般会計分約1898億円)、外務省等約69億円(一般会計分のみ)となっている。一般会計以外は電源開発促進対策特別会計(電源特会)から支出される。
- 通産省も科技庁も増加目立つ広報予算このうち広報予算は、通産省が73・6億円、科技庁が77・73億円で、前年度予算額に比べてそれぞれ1億5千万円、4億5千6百万円の増である。原子力予算全体の前年度比較は約188億円の減のなかで、広報予算の増加が目立つ。
- 広報予算の使途について科学技術庁の例をみると、動燃事故以後の国民の不信、不安にたいして情報公開を促進し、対話集会、インターネットやマスメディアの利用、原子力施設見学会、簡易放射線測定器の貸し出し、科学館の展示物整備、シンポジウムの開催などがあげられているが、具体的に何をPRするかはのべていない。
- 原子力広報の目的は、資源エネルギー庁などが策定した原発大増設計画を達成するため、およびプルトニウムリサイクル政策を強行するために、原子力施設の立地や建設、運転をスムーズに実行できる世論づくりにある。
- そのため、原子力は実証済みの安全な技術であるという「安全神話」が広報の柱として繰り返し宣伝されてきた。
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- ●事故の教訓を軽視し「安全神話」ふりまく
- ところが、原子炉の事故が諸外国で続発すると、日本とは炉型が違うとかメーカーが異なるなどと言い逃れをし、日本でも原子力施設の事故・故障が多発して国民の不安が増してくると、事故は大したことはないのに国民が不安に思うのは広報が不足しているからだとして、パブリック・アクセプタンス(注参照)を得るための種々の対策が打ち出された。
- かつて「石油危機」などのエネルギー問題も原子力発電推進のPRに利用された。エネルギーセキュリティーなどの主張がなされ、原子力があたかも自主的エネルギー源であるかのように宣伝され、軽水炉運転中に生成したプルトニウムまで純国産エネルギー資源だと強弁した。しかし、米国に核燃料の濃縮ウランを依存し、プルトニウムの利用も日米原子力協定で米国の同意を義務づけられるなど、原子力も自主的エネルギーとはいえない状態にある。
- 最近は、炭酸ガスによる地球温暖化問題にかこつけて、原子力発電の推進を宣伝しようとしている。この手法は以前から用いられていたが、現在問題になっている国際的削減計画の時期に合わせて強調されているものである。原子力発電は炭酸ガスを放出しないが、放射性物質の一部を核燃サイクル施設から平常運転時でも放出しており、事故時の潜在的危険を考えればクリーンエネルギーなどとはほど遠いものである。
- 広報で国民の不安や不信が取り除けるという発想は「安全神話」の延長上にあるもので、チェルノブイリやスリーマイル原発での大事故、日本の各地の原発で多発しているトラブル、さらには、「もんじゅ」や再処理工場での事故の教訓を軽視するものである。
- 国民の安全を重視するならば、プルトニウムの利用を柱とする原子力政策の根本的見直しこそ強く求められるべきである。
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- ●注パブリック・アクセプタンス(public acceptance)社会的受容性。政府・企業などが原子力発電所・空港などを建設する前に必要とされる、地域住民の同意と承認。
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