国民の信頼を失墜させた「もんじゅ」の重大事故を機に、批判が集中した高速増殖炉開発路線を検対してきた懇談会が、報告で案をまとめました。ところがその方向は・・。
原子力委員会の下にある高速増殖炉懇談会(座長・西沢潤一東北大名誉教授)が10月9日まとめた、高速増殖炉開発の今後のあり方にかんする報告書案は、「高速増殖炉の実用化の可能性を技術的、社会的に追求するために、その研究開発を進めることが妥当」だとして、従来路線の踏襲をうちだしています。ま1995年12月のナトリウム漏れ・火災事故以来運転を停止している動力炉・核燃料事業団(動燃)の「もんじゅ」についても、研究開発を続けることは必要だとしています。
●まず推進ありき、を改めよ
懇談会の目的は、「『もんじゅ』の扱いを含めた将来の高速増殖炉の開発の在り方について幅広い審議を行い、国民の意見を政策に的確に反映させること」(報告書案)であるはずです。ところが報告書案の立場は、「もんじゅ」についての記述に示されるように、「問題があるというだけで研究開発を中断すること自体、これまでの成果を無にすることに等しく、大きな損害を与える」と、たびかさなる事故や安全性についての国民の批判と不安に耳をかそうとしていません。どんな「問題」があろうとこれまでの路線に固執するというものです。
はじめに推進ありきの姿勢で、どうして、「国民の意見」を反映させられるでしょうか。95年12月に発生した、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム火災事故は、高速増殖炉技術の未確立を事実でしめすとともに、国民の不安と不信感を増大させました。動燃によるビデオ隠しや虚偽報告も明るみに出て、政府の原子力政策の根本にたいする批判が高まりました。
報告書案がこれを、「初歩的な設計管理上のミス」「動燃の体質の問題」として簡単にかたづけているのは無反省というものです。
プルトニウム循環路線は、全国の原発からでる使用済み核燃料を再処理工場などで処理し、そこで分離されるプルトニウムを「もんじゅ」型の高速増殖炉などの燃料にしてゆく循環を想定しています。しかしこの方式は、95年のナトリウム火災をはじめ、核反応が暴走する反応度事故の危険、補修・点検・整備の困難などが指摘されており、その技術は従来の原発以上に末確立であることは明りようです。
日本より先に高速増殖炉開発を進めていたドイツ、アメリカ、イギリス、フランスが次つぎと実用化を断念したのは、技術的に未確立だけでなく経済的な見通しも立たないからです。
直接的経費だけでも約6千億円を投じ、数10年にわたって研究開発をつづけながらなお実用化のめどがたっていないにもかかわらず、高速増殖炉路線を推進しているのは日本だけです。
報告書案は、なぜ各国が撤退したのかの原因にまったくふれず、「実用化の可能性を探究し、その結果を基に解決すべき課題を明らかにして、これを着実に解決していく」との立場で押しさろうとしています。「もんじゅ」をつくったのだからとりあえずこれでいこうという無責任きわまりない姿勢です。なにが起ころうとます高速増殖炉開発ありき、という態度こそ問題です。その背景にあるのは、「安全神話」をふりかざし、「夢の原子炉」と宣伝する政府、電力会社の無謀な推進姿勢です。
●国民の意見聞く耳あるなら
報告書案も懇談会内の意見として、「この高速増殖炉には本質的に解決できない困難が存在していると考えるべきであり、これ以上開発を続けるべきでない」という反対意見を紹介していますが、技術的・経済的に見通しがまったくない高速増殖炉開発というプルトニウム循環路線の破たんはいまや明らかです。
報告書案は14日の原子力委員会に提出され、今後一カ月間、一般からの意見を公募するとしています。真に国民の意見を求める姿勢があるというなら、世界でも異常なプルトニウム循環方式を軸とした核燃料リサイクル政策の根本的見直しにこそ早急にとりかかるべきです。
◆原発デー夕改ざん問題・・エネ庁が品質管理で日立に改善指導。 先頭に戻る
国内の沸騰水型軽水炉原発の配管溶接部における熱処理作業で温度データが改ざんされていた問題で、通産省・資源エネルギー庁は10月13日、日立製作所と日立エンジニアリングサービスにたいし、品質管理体制の改善を指示するとともに、国の指定検査機関である財団法人・発電設備技術検査協会に、今後抜き打ちの立ち会い検査などをおこなえるよう、電気事業法にもとつき業務規定の変更を命じました。
同協会は、これを受け児玉勝臣理事長を減俸30%(3カ月)、常勤役員4人を減俸10%(1カ月)とする処分を発表しました。
同庁は、改ざんの疑いがあるとされ、調査が済んでいない原発11基(211カ所)について、定期検査時などを利用して調べるとともに、電気事業審議会の電力保安問題検討小委員会(小委員長・近藤駿介東大教授)で、今年度内をめどに溶接検査制度の抜本的見直しをおこなうとしています。
また、作業を請け負った伸光が焼鈍(やきなまし)を実施した電力会社や民間企業の火力発電所でも、15基(計26カ所)に改ざんの疑いがあることが判明しました。
今後、定期検査時に設置者が問題の個所を調べ、そのデータにもとつき国が健全性を評価します。