●岐路に立つ原子力政策を問う
今年(97年)の3月に動燃(動力炉・核燃料開発事業団)の東海再処理工場で発生した火災爆発事故は、一昨年の「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故とともに、プルトニウム利用を中心とする日本の核燃料サイクル政策について大きな疑問を国民の間に生じさせるものであった。NHKスペシャル「動燃事故」は、この間題を多角的に取り上げ、内容の充実したものであった。
TBP(リン酸トリブチル)関与可能性高い
番組はまず、動燃再処理工場の火災爆発と類似のベルギーの施設で1981年に発生した火災を取り上げ、その原因が再処理の主要工程で使用するTBP(リン酸トリブチル)という薬品の混入による疑いが強いとの関係者の証言を得た。
また、動燃の事故原因も、日本原子力研究所での実験や大学での再現実験から、TBPの混入による発熱が関与している可能性が高いことを示唆した。
しかし動燃は、TBP説を否定する別の事故原因の想定シナリオを事故調査委員会に提出している。これは、事故のあったアスファルト固化施設以外の工程に問題が波及する恐れのあるTBP説を避けたいという意向の現れであろう。
ドイツでは核燃料サイクルからの事実上撤退
番組は、再処理、高速増殖炉を中心とする核燃料サイクル政策がイギリス、フランス、ドイツでいずれも困難に直面し、とくにドイツでは国をあげての議論の末に核燃料サイクルからの事実上の撤退を決め、代わりに使用済み燃料を深地層に直接廃棄するという方針がとられたことを紹介する。ここでは綿密なコスト計算により直接廃棄の有利性が認められているという。
日本では、六ケ所村の再処理工場の安全性への懸念、原発サイトでの使用済み燃料貯蔵量の増加、軽水炉でプルトニウムを燃やすプルサーマル利用への不安など、核燃料サイクルへの不信感が事故後いっそう高まっていることが示された。
また、動燃の解体による仕事の一部を電力会社に肩代わりさせる方針が科学技術庁から電気事業連合会(電車連)に提起されたが、電事連は開発は国の責任でとこれを拒否し、逆に、動燃再処理工場の運転を一部を除いて中止するよう求めたことが報じられた。
動燃改革検討委員会は、動燃に代わる新法人が高速増殖炉関連技術と高レベル廃棄物処分技術の開発を中心に核燃料サイクルを推進し、再処理工場も当分稼働するとの方針を固めつつある。
「もんじゅ」と再処理の事故で動燃にたいしてつのった不信感は、動燃だけでなく核燃料サイクルを中心とする原子力政策への不信感を伴っている。
番組は、核燃料サイクルを推進すべきなのか否か、日本の原子力政策が岐路に立たされている現実を具体的にまとめている。