福島第1原発 工程表ステップ2へ、「安定的」とは程遠い状況 続く険しい道のり・・原発事故「工程表」。 何度も中断した「循環注水冷却」
(「しんぶん赤旗」2011/7/18-2)


福島第1原発 工程表ステップ2へ、「安定的」とは程遠い状況 続く険しい道のり・・原発事故「工程表」。 何度も中断した「循環注水冷却」


 福島第1原発事故の収束に向けた「工程表」の発表からちょうど3ヶ月たった17日、細野豪志原発担当相はNHK日曜討論で「最終的には安定的な冷却を達成し、水素爆発の危険性をなくすという、ステップ1は達成できたと考えている」と述べました。果たして、ステップは確実に踏まれているのでしょうか。

 東京電力の計画では「原子炉の安定的な冷却」などの課題を掲げたステップ1を3ヶ月で達成し、原子炉の「冷温停止」や放射能汚染水の低減などをめざすステップ2(3〜6ヶ月かけて達成)へと進むとしています。

 6月中旬の工程表改定後、汚染水を処理して原子炉冷却に再利用する「循環注水冷却」がスタート。水素爆発の危険性を低減する窒素注入も1〜3号機で開始しました。

 ところが細野原発相も認めるように「実にいろいろなトラブルがありました」。そして、トラブルは今も続いています。循環注水冷却は何度も中断。安定的と言うには、ほど遠い状況です。政府は、19日にも工程表の改訂版を発表するとしていますが、今後も険しい道のりが予想されます。

循環注水冷却・・薬液漏れ頻発

 福島第1原発の事故処理。工程表の「ステップ2」の段階に入る計画ですが、課題は山積しています。

 東京電力は14日、原子炉に注水する水をためるタンクの水位が低下したため、近くのダムから取水した水を補給しました。タンクには本来、高濃度の放射能汚染水を処理した後の水を供給する、というのが循環注水冷却の流れ。しかし、水処理システムの相次ぐトラブルで供給が低下し、処理水のみの注水は、2日の開始後わずか2週間弱で中断。システムの脆弱性が露呈しました。

 1〜3号機は、運転停止後も炉心が崩壊熱を出し続けており、長期間、水で冷やし続けなければなりません。

 循環注水冷却はそもそも、原子炉への注水によってタービン建屋地下などに高濃度汚染水が増え続ける状況のなか、たまった汚染水をポンプでくみ出し、放射能の低減や塩分を除去する処理をした後に、冷却水として再び原子炉に注水するというものです。


 4月に発表した工程表では、冷却方法として原子炉格納容器を原子炉圧力容器ごと水で満たす$漬け″作業を進めていました。しかし、格納容器の水漏れで$漬け″作業は断念に追い込まれ、汚染水が海などへあふれ出す危険を回避するための窮余の一策が循環注水冷却でした。

 総延長約4キロメートルの配管を屋外に引き回す大掛かりなものとなり、油分離装置、アメリカ・キュリオン社製セシウム吸着装置、フランス・アレバ社製の除染装置、淡水化装置で構成される水処理システムそのものが急ごしらえで複雑。多くの困難が予想されました。

 実際、6月中旬から動き始めた水処理システムは配管接続部の漏えい、操作プログラムの不具合、安全弁の破損、弁の設定ミスなどが続出しました。今月も10日以来、除染装置の薬液漏れが頻発。システムの稼働率は70%程度と低い予想です。

 高濃度汚染水の量は現在12万トン。処理の遅れで、原子炉への注水による建屋地下などの汚染水が減らず、外部にあふれ出す瀬戸際の状況が続いています。今後、台風や豪雨などで雨水が大量に流れこむことが心配されます。

 一方、1号機では一時、原子炉への注水量の低下を示す警報が鳴りました。東電は配管に異物が詰まった可能性があるとしていますが、原因はいまだ不明。工程表のステップ2でめざす冷温停止(炉内の温度が100度未満に落ち着く状態)にむけ、事故処理の最大の課題である炉心冷却にも懸念材料が残ったままです。

 

作業員被ばく、大幅増の危険

 水処理システムの不調で、トラブル処理にあたる作業員の被ばく量が当初の計画より大幅に増えることも心配されます。セシウム吸着装置の吸着塔の交換は、当初1ヶ月に1度の予定でしたが、数日単位で頻繁に交換する必要性が明らかになりました。装置表面の放射線量が想定より大きく、作業員の被ばく量
を抑えるためです。

 工程表では、作業員の放射線管理や医療体制の改善を掲げています。しかし、事故処理にあたる作業員の被ばくは、本来の緊急時の被ばく限度100ミリシーベルトを超えた人が100人以上になり、今回の事故に限って引き上げた被ばく限度250ミリシーベルトを超えた人も6人となっています。熱中症などで倒れる作業員も連日でており、工程表で明示したクールベスト着用が徹底されていないなど、東電の健康管理のずさんさが指摘されています。

 原子炉建屋内は、依然として高い線量が作業を困難にしていますが、この間、作業員が立ち入って状況確認や計器の校正、工事などが進んでいます。水素爆発を防止するための原子炉格納容器への窒素封入も各号機でようやく実施。使用済み核燃料貯蔵プールは、2、3号機で循環型の冷却が実現しました。

 ステップ2では、水処理に伴って発生する高濃度の放射性廃棄物の汚泥の扱いが大きな問題となります。1立方センチメートルあたり1億ベクレルという高濃度の放射性汚泥の発生は、年末までに2000立方メートルを超えるとみられます。

一方、地下水の汚染拡大を防ぐ遮へい壁の検討は、5月に改定された工程表ではステップ1に含まれていましたが、具体化されていません。工法の検討にとどまらず、具体的な設計・建設を進めることが急がれます。(中村秀生)

3号機原子炉建屋上部での空気中の放射性物質のサンプリング状況(6月13日、東京電力提供)


 

トラブル対策お粗末・・舘野淳・元中央大教授(核燃料科学)

 現時点での最大の問題は、汚染水の処理技術だと思います。トラブルが続く状況をみていると、高濃度の放射性物質を扱う心構えが疑われます。いったん汚染水を入れてしまえば容易には装置に近づけないので、水で試験をして万全の措置をとるべきなのに、弁を逆につけるなど緊急時とはいえ対応がお阻末すぎます。頻繁にシステムが止まり、修理にあたる作業員の被ばくは深刻です。人海戦術で何とかしようというのはむちゃな話です。

 地下水の汚染も心配です。雨が流れ込んでくれば建屋の地下などから外部に漏れる心配があります。また、水処理システムから漏れた汚染水が地面に染み
こむといった汚染領域の拡大を防ぐことも大切です。屋外で大量の放射性物質を扱うというのは、通常では考えられない事態です。コンパクトな冷却システ
ムを急いで構築する必要があるのではないでしょうか。

 また、これから水処理システムで発生するヘドロ状の放射性物質をどう処理するのか。扱いがやっかいなものだけに、再処理工場などのきちんとした装置で処理することを検討すべきだと考えます。

 事故処理全体としては、水素爆発の危険性もなくなったわけではありません。万全な対策が求められます。