保安院が耐震設計考慮外断層の再評価へ・・電力会社が保安院に「考慮外断層」を報告

福島第1 ストロンチウム90・・依然「通常の100倍」

放射性物質の海産物影響調査・・水産庁が結果発表

プール水温が低下・・福島第1循環冷却の2号機

福島原発 津波災害を過小評価‥IAEA調査団が規制機関独立性求める

主張 原発事故被害 一日も早い全面賠償の実現を
原発作業員の健康守れ/高橋議員要求‥厚労相「万全期す」
子どもの生活 放射線対策を/宮本議員‥1ミリシーベルト基準は校内のみ
(「しんぶん赤旗」2011/6/2)


保安院が耐震設計考慮外断層の再評価へ・・電力会社が保安院に「考慮外断層」を報告

 原発などの原子力施設を保有する電力会社と日本原子力発電など19社は5月31日、それぞれの施設の耐震設計で現在考慮していない断層について、経済産業省原子力安全・保安院に報告しました。
 東京電力は、東日本大震災で深刻な状況に陥っている福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)周辺に、こうした断層が11存在することを明らかにしました。

 東日本大震災の後、全国各地で地震活動が活発化しています。保安院は、国の原子力安全委員会から、これまで耐震設計で考慮してこなかった断層について再評価するよう指示を受け、電力会社に報告を求めていました。

 各原発とも周辺には耐震設計で考慮されていない断層が数多くあり、合わせて342の断層が報告されました。福島第1原発の周辺の断層には、北部と南部合わせると長さが90キロ以上になる双葉断層も含まれています。


福島第1 ストロンチウム90・・依然「通常の100倍」

 東京電力は5月31日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)敷地内3ヵ所で5月9日に採取した土壌から放射性のストロンチウム89と同90が、4月18日にほぼ同じ場所で採取した土壌から検出されたのに続いて、検出されたことを明らかにしました。
 ストロンチウム90の濃度が通常検出される値の約100倍に相当していることから、今回の事故で放出されたものだとしています。

 土壌を採取した場所は、1号機から西北西へ約500メートル離れた「グラウンド」と、西へ約500メートル離れた「野鳥の森」、南南西へ約500メートル離れた「産廃処分場近傍」の3力所です。ストロンチウム89が乾燥土壌1キログラムあたり1700〜2800ベクレル、同90が同じく300〜480ベクレルで、前回とほぼ同じレベルでした。

 ストロンチウム89と同90は、カルシウムと似た性質をもち、摂取すると骨などに蓄積して、放射線を出すため、骨がんなどの原因になります。ストロンチウム90は半減期(放射能の量が半分に減るのに要する期間)が約29年と長いため、約50日のストロンチウム89よりも影響が大きいとされています。
 過去の大気圏核実験の影響で、国内でも半減期の長いストロンチウム90が乾燥土壌1キログラムあたり最大4・3ベクレル検出されています。


放射性物質の海産物影響調査・・水産庁が結果発表

 水産庁は1日、東京電力福島第1原発(大熊町、双葉町)事故で放出された放射性物質の海産物などへの影響調査のまとめを発表しました。

 都道府県などで3月24日から5月31日までに発表された海産魚、貝類、海藻、海産加工品、淡水魚などの457件の調査結果で、うち27件が暫定規制値(1キログラムたり放射性セシウム500ベクレル、同ヨウ素131が200ベクレル)を上回っています。規制値を超えたものは市場に出回っていないといいます。

 規制値を超えた内訳は、海産魚ではコウナゴが12件、シラスが3件で福島第1原発以南の福島県沖や北茨城市沖などで採取したものです。また、貝類ではムラサキイガイが1件、海藻ではワカメー1件、ヒジキ1件、アラメ1件、淡水魚では、アユ2件、ヤマメ3件、ワカサギ2件、ウグイ1件でいずれも福島県沖や同県内の川や湖で採取したもの。

 暫定規制値を超えないものの放射性セシウム、ヨウ素131のいずれかが検出されたのは457件のうち7割にのぼります。


プール水温が低下・・福島第1循環冷却の2号機

 東京電力は1日、代替循環冷却装置の運転を始めた福島第1原発(大熊町、双葉町)の2号機の使用済み燃料プールの水温が、運転を始めた5月31日夕に67度が、1日午後4時時点で48・4度に下がったと発表しました。

 2号機原子炉建屋内は、プール水の蒸発により湿度が99・9%となるなど、極めて作業環境が悪く、東電は約1ヵ月で水温を40度程度に下げることを目指
しています。

 一方、東電は流出した放射性セシウムを吸着させるため、1〜4号機の取水口付近に設置した海水の循環型浄化装置を1日から試運転させる予定でしたが、電源装置のトラブルで延期しました。原因は不明といいます。


福島原発 津波災害を過小評価‥IAEA調査団が規制機関独立性求める

 東京電力福島第1原発事故で、来日中の国際原子力機関(IAEA)の調査団は1日、「日本の原発が津波災害を過小評価していた」などとする事故報告書の要旨をまとめ、政府に提出しました。

 報告書は、福島第1原発が地震直後に運転を停止できたものの、14メートルを超える津波でほぼ全ての非常用電源を失ったことが事故の要因と認定。

 一方で、日本の原発が津波災害を過小評価してきたと指摘。原発を運転する電力会社などが全ての自然災害のリスクについて、適切に防御策を講じるべきだとしました。

 さらに、原子力規制行政のあり方にも言及。経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会による規制についても、各機関の独立性担保と役割の明確化を進めるべきだと提言しました。

 各国の原子力専門家18人からなる調査団は5月24日から調査を開始。東日本大震災で津波被害を受けた日本原電東海第2原発(茨城県東海村)、東電福島第2原発を視察した後、同27日に福島第1原発を訪問。吉田昌郎所長から事故の状況などについて聞き取りを行い、発電所内の状況を見て回りました。

 調査団は帰国後に報告書を完成させ、今月20日からウィーンで開かれるIAEA閣僚級会合に提出。原発の安全性向上策が議論されます。

解説・・原子力行政の誤り明らかに

 国際原子力機関(IAEA)の報告書要旨は、日本の原子力政策がいかに間違ったものであるかを浮き彫りにしています。

 日本の原発はすべて海に面したところに立地しています。海底で巨大な地震が発生すれば、津波によってすべての電源を失って原子炉が冷却できなくなり、取り返しのつかない事態に至る危険性があることは、早くから多くの人たちが指摘してきました。

 住民団体や日本共産党は、再三にわたって、国と電力会社に申し入れを行い、国会で質問し、対策を求めてきました。しかし、国と電力会社は、「現実には起こらない」「多重、多様な電源設備がある」などといって、この問題に目をつむってきました。その結果、福島第1原発は、三つの原子炉が同時に炉心溶融(メルトダウン)を起こし、大量の放射能を放出するという世界で例をみない深刻な状況に陥っています。

 日本の原子力規制行政が、推進機関から独立していないという指摘についても、住民団体と日本共産党は問題点を明らかにし、是正を求めてきました。

 一方、報告書要旨は、事故後ベストの対応が取られたと評価していますが、本当にそうでしょうか。日本では、過酷事故に対する備えがありませんでした。そのために、国も電力会社も、危機にあたってどうすべきか明確になっておらず、打つ手がことごとく後手にまわって最悪の結果を招いたというのが実態です。

 20日に提出される本報告が、日本の原子力行政の抜本的見直しに役立つ内容としてまとめられることが求められています。(間宮利夫)