| 電力会社の不正に関連して原子力安全・保安院が示した中間報告案は、一連の不正を今後不正とはみなさないための配慮はみられますが、原発をより安全に規制するという肝心な点が抜け落ちています。
報告案では、「科学的・合理的な根拠に基づく信頼できる基準を整備」し、損傷の程度がこの基準に照らしてどうなのかを電力会社が判断するとしています。
今回の一連の不正は、電力会社が信頼できないことを明らかにしました。東京電力の報告書は、原発の運転効率を第一に考え、自分たちが一番わかっているという「過信」のもとに、損傷があっても「たいしたことはない」と勝手に判断していたことを明らかにしています。
この体質が今後改まるという保証はありません。効率のために安全が犠牲にされる心配はさらに大きくなります。
「科学的・合理的な根拠に基づく信頼できる基準」が現段階で可能なのかも疑問です。
沸騰水型原発で炉心隔壁(シュラウド)のひび割れが多発しています。シュラウドのひび割れは一九九〇年代初めに各国で問題化しました。国と電力会社はその後、シュラウドをひび割れしにくい材質でつくっていると説明しています。しかし、その新材質のシュラウドにもひび割れが多発しています(別項)。その原因は解明されていません。
東京電力の福島第一原発3号機では、制御棒駆動系配管の86%にひび割れができ、三本ではひびが貫通していました。まさか、予想されていたことではないでしょう。
原因も解明されていないのに、科学的で合理的な基準をつくるのは無理です。
今回明るみにでた電力会社の一連の不正は、電力会社まかせでは原発の安全が守れないことを示しています。日本の原発の安全規制では、電力会社を監督・指導するだけの力量をもつ規制機関が存在しないことが最大の欠陥になっています。
「原子力の安全に関する条約」では、原子力を推進する部門と規制する部門を分けることを定めています。推進部門である経済産業省の一部門にすぎない原子力安全・保安院が、規制機関の役割を果たし得ないことは明らかです。安全確保のための独立した規制機関をただちに確立する必要があります。(前田利夫記者)
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